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研究内容

0.概要

0-1.光合成反応中心のエネルギー変換機構

 今日も地球上には、太陽から燦々と光がふりそそいでいます。約45億年前に誕生した原始地球は灼熱のマグマが地中奥深くから吹き出す不毛の世界でしたが、そこにはいつの間にか生命が生まれ、多様な植物と動物がおりなす世界へと生まれ変わりました。美しき青き地球。その地球上のあらゆる生命活動は、この太陽からの無尽蔵ともいえる光エネルギーによって営まれています。光合成による炭酸固定と酸素放出。もう分かりきったことだと言われそうですが、現在の地球環境維持には欠かせない重要な生体反応システムであることは間違いありません。この光エネルギー変換に関わる光合成反応中心のメカニズムを、分子のレベルで理解し、物理と化学の言葉で語ってみようと研究しています。反応中心は生体膜中に存在する色素タンパク複合体であり、その反応系の原理・原則を本質的に理解することを目的としています。
(参考文献)
(1) NF191回講演会(2004年2月)要旨(PDF
(2) H. Oh-oka (2007) Type 1 reaction center of photosynthetic heliobacteria. Photochem. Photobiol. 83: 177-186
(3) 塚谷祐介, 浅井智広, 大岡宏造 (2010)「緑色硫黄細菌の非循環型の光合成電子伝達系」光合成研究20(2)pp.100-108
(4) 浅井智広, 大岡宏造 (2014)「ホモダイマー型光合成反応中心の分子構築と反応機構」「光合成のエネルギー利用と環境応用」2014, pp. 53-61 シーエムシー出版 ISBN978-4-7813-0927-9C3045


0-2.光合成反応中心にリンクする電子伝達経路

 光合成反応中心が光エネルギーを吸収し、効率よく還元力を作り出すためには、常に反応中心がturn overする反応機構が重要です。つまり光によって酸化された反応中心(酸化側)には速やかに電子の供給が行われ、再還元されることが必要です。この経路は高等植物の葉緑体やシアノバクテリアではかなり調べられていて、キノール:プラストシアニン酸化還元酵素(シトクロムb6/f複合体)と光化学系I反応中心の間には、水溶性のプラストシアニン(PC)やシトクロムc6(cyt c6、シアノバクテリアのみ)が働いています。今では、PCやcyt c6、およびシトクロムb6/f複合体、系I反応中心複合体の詳細な立体構造も分かっていますので、分子レベルでの反応機構を議論することも可能となっています。しかしながら緑色イオウ細菌やヘリオバクテリアの反応中心に電子を渡す経路については、実はあまりよく分かっていません。紅色細菌や植物(シアノバクテリア)のもつ電子伝達経路との比較の上で推測されているに過ぎません。特に緑色イオウ細菌が還元型イオウ(S-, S2O32-, S)を硫酸イオン(SO42-)にまで酸化する経路は未だに不明であり、このイオウ代謝経路は地球上のイオウ循環経路を考える上で非常に重要な位置を占めています。最近ではさまざまなイオウ細菌のゲノム解析からイオウ酸化機構が議論されるようになりましたので、将来の発展が楽しみな領域です。私たちも少しずつではありますが、化学反応としても非常に興味深いイオウ酸化系を研究していきたいと考えています。
(参考文献)
(1) 塚谷祐介, 浅井智広, 大岡宏造 (2010)「緑色硫黄細菌の非循環型の光合成電子伝達系」光合成研究20(2)pp.100-108


0-3.光合成色素の合成経路

 光合成色素の合成経路は非常に複雑です。教科書や代謝マップの中に描かれたその合成経路を少しでも見たたことのある人なら、生物進化の過程でどのようにして出来上がったのか不思議な思いにかられることでしょう。そこにはさまざまな酵素群(遺伝子群)が関与しているために、生化学者から分子生物学者、さらには有機化学者などなど、多くの研究者にとって実はとても魅力的な研究領域となっています。一般にポルフィリンおよびその誘導体(ビタミンB12(VB12)、ヘム、(バクテリオ)クロロフィル((B)Chl)など)は、共通の中間体(uroporphyrinogen III)を通って合成されます。この中間体からそれぞれの最終産物へと枝分かれしていくのですが、光合成生物にとって必須である(バクテリオ)クロロフィルはどのように合成されるのでしょうか?私たちは特に、この経路上で働くSAMを基質とするメチル化酵素群、および直鎖アルコール基(フィトール鎖、phytol)の還元過程に興味を持って研究を進めています。
(参考文献)
(1) 原田二朗, 大岡宏造, 民秋均(2010)「巨大アンテナ系クロロソームを構成するバクテリオクロロフィル分子:その生合成の解明と今後の展開」光合成研究20(2)pp.93-99

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