第26回「光合成セミナー2018」

講演会内容

講演会 1

「光合成細菌タイプ1反応中心の研究の現状」
大岡 宏造 (大阪大学大学院 理学研究科)

 光合成反応中心は末端電子受容体の種類により、PS IIタイプとPS Iタイプに分類される。植物やシアノバクテリアはこれら両タイプをもつが、紅色細菌はPS IIタイプのみ、ヘリオバクテリアや緑色イオウ細菌はPS Iタイプのみをもつ。私たちは両タイプには共通の分子基盤(スペシャルペアP、一次電子受容体A0、二次電子受容体A1)が機能すると考え、緑色イオウ細菌およびヘリオバクテリアの反応中心の分子構築と電子移動経路・機構について研究を進めてきた。そして最近になって電荷分離状態P+A1-に由来する電子スピン分極信号を検出し、長く論争の的であった二次電子受容体(A1)キノンの存在を分光学的に示すことができた。ところが昨年(2017年)9月に米国・アリゾナグループが報告したヘリオバクテリア反応中心の立体構造には、電子移動経路上にキノンが存在しなかった。果たしてキノンは電子受容体として存在しないのであろうか。現時点ではpreliminaryではあるが、私たちが独自に進めているヘリオバクテリア反応中心のX線結晶構造解析も紹介しながらキノン分子の役割について考えてみたい。
 光合成セミナー「反応中心と色素系の多様性」が立ち上がって四半世紀が経過したが、二次電子受容体(A1)キノンの問題は未だに解決に至っていない。これからも本セミナーを通じて皆さんと一緒に議論していく必要がある。  

講演会 2

「カロテノイド研究30余年」
高市 真一 (東京農業大学 生命科学部 分子微生物学科)

 このセミナーには第2回から欠かさずに参加し発表をしたと思う。「光合成細菌の色素系と反応中心に関するセミナー」を長年に渡り開催し続けた三室さんに、その後「光合成セミナー:反応中心と色素の多様性」を開催している諸氏に感謝をする。
 日本医大生物に所属していたときは研究室には一人だったので、学外の多くの方々と共同研究をした。紅色細菌、好気性光合成細菌、クロロフレクサス、緑色硫黄細菌、ヘリオバクテリア、シアノバクテリア、紅藻、褐藻、緑藻、陸上植物など、全ての光合成生物が研究対象となった。最近は分類群ごとのカロテノイド分布や生合成経路をまとめ、さらに進化に伴いどのような変遷をしたかを検討している。
 4月から新設の学科に転任したが、学科名のように微生物を中心にカロテノイド(分子)の研究を続ける所存である。

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