第25回 「光合成セミナー2017:反応中心と色素系の多様性」 本文へジャンプ


講演会1
「光合成セミナーとLH1-RC構造決定までの道のり」
大友 征宇 (茨城大学 理学部)

光合成セミナーとの出会いから、紅色光合成細菌の光捕集反応中心複合体の構造解析を通して、論文では読み取れないできごとも交えて、これまでの研究の流れをふり返ってみたいと思います。


講演会2
「カロテノイド研究30余年」
高市 真一 (東京農業大学 生命科学部 分子微生物学科)

このセミナーには第2回から欠かさずに参加し発表をしたと思う。「光合成細菌の色素系と反応中心に関するセミナー」を長年に渡り開催し続けた三室さんに、その後「光合成セミナー:反応中心と色素の多様性」を開催している諸氏に感謝をする。
 日本医大生物に所属していたときは研究室には一人だったので、学外の多くの方々と共同研究をした。紅色細菌、好気性光合成細菌、クロロフレクサス、緑色硫黄細菌、ヘリオバクテリア、シアノバクテリア、紅藻、褐藻、緑藻、陸上植物など、全ての光合成生物が研究対象となった。最近は分類群ごとのカロテノイド分布や生合成経路をまとめ、さらに進化に伴いどのような変遷をしたかを検討している。
 4月から新設の学科に転任したが、学科名のように微生物を中心にカロテノイド(分子)の研究を続ける所存である。


講演会3
「クロロフィル代謝の機能と進化」
田中 歩 (北海道大学 低温科学研究所)

光合成色素は光エネルギーの捕捉を担うため、光を通じて環境からの直接的な作用を受けます。そのため、光合成色素は変動する環境への馴化だけでなく、生物の進化においても重要な役割を担っています。一方新しい光合成色素の誕生は、新しい光化学系・集光装置の形成を伴います。このため、光化学系の形成や分解においても新しい機構を構築する必要があります。Mg-dechelataseはクロロフィルaから中心金属のMgを引き抜く反応を触媒し、クロロフィルaをフェオフィチンaに転換します。陸上植物において、この反応はクロロフィル分解の最初の反応であり、クロロフィル分解を制御すると考えられています。一方、フェオフィチンaは光化学系IIの不可欠な分子であるため、Mg-脱離反応は光化学系IIの形成や修復にもかかわっていることが予想されます。この相反する二つの過程をどのように制御しているのでしょうか。今回は、シロイヌナズナとクラミドモナスのSGR(Mg-dechelatase)の機能を探り、緑色植物の進化とクロロフィル代謝の関係を議論します。


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