第22回 「光合成セミナー2014:反応中心と色素系の多様性」 本文へジャンプ


講演会1
「二次非線形レーザー分光法による液体界面の研究」
山口祥一(埼玉大学 大学院理工学研究科)

界面研究の様々な実験手段の中で,二次非線形レーザー分光法は非常にユニークな位置を占めている.この方法の界面選択性は,電気双極子近似の下で二次非線形感受率が等方的でキラルでないバルクにおいてゼロになるのに対して,界面においてはゼロでない値を取り得る,という原理に基づいている.二次非線形分光は大気中で非侵襲的に界面に適用可能であり,界面の電子構造・分子構造の決定に不可欠な情報を与え,界面化学種の帰属や界面の機能の考察にとって極めて有用である.我々は,界面分子の向きを一目瞭然に示す感受率の実部と虚部のスペクトルを与えるヘテロダイン検出二次非線形分光法を新開発し,界面の分子配向決定などに応用している.


講演会2
「光化学系とアンテナ 〜シアノバクテリアの新規アンテナ-光化学系I超複合体〜」
渡邉麻衣(東京大学 大学院総合文化研究科)

酸素発生型の光合成生物は、光化学系Iと光化学系IIの2つの光化学系により光合成を行う。それぞれの光化学系は特異的なアンテナをもち、太陽光を効率よく集めている。シアノバクテリアではフィコビリソームが光化学系IIのアンテナとして働くことが知られている。しかし、光化学系Iに特異的なアンテナの存在は知られていなかった。最近我々は、シアノバクテリアの一種から光化学系Iと新規フィコビリソームとの超複合体の単離に成功した。通常のフィコビリソームは、ロッドとコアからなりそれぞれが固有のリンカーによりつながっている。一方、新規フィコビリソームはロッドのみからなり、新規のリンカーを含んでいた。超複合体の単離と解析について最近の機能解析の結果も合わせて紹介したい。


講演会3
「時間分解蛍光分光法を用いた光合成初期過程の観測」
秋本誠志(神戸大学 分子フォトサイエンス研究センター)

光合成色素系ではカロテノイドやクロロフィルなどの色素分子が近接して並べられており、光を吸収した後、色素分子間でエネルギー移動や光誘起電子移動が起こる。これらの高速現象は様々な方法で観測することができるが、中でも蛍光分光法は、電子励起状態にある物質からのシグナルのみを観測する方法であり、分子が持つ励起エネルギーと観測される波長とが1対1で対応するなど、得られる情報がシンプルである。光合成系でのエネルギー移動は、100フェムト秒から100ピコ秒の時間領域で起こる。したがって、エネルギー移動過程を直接観測する場合、サブピコ秒からピコ秒の時間分解能を有する観測システMS ゴシックムが必要となる。本講演では、種々の時間分解蛍光分光法についての概略を述べた後、実際の光合成系サンプルの観測例を紹介し解説する。


要旨のダウンロード