研究生物紹介

ルリキンバエ(Protophormia terraenovae)

 亜寒帯や寒帯に生息する体長1cmほどのハエで,日本では主に北海道に分布する.学名、和名の通り晴天下では大地を背景に深い青色に輝くハエだが,室内では残念ながら黒く光っている程度にしか見えない. 日本ではなじみが薄いが,ヨーロッパでは普通にいる種で,英国顕微鏡学会150年記念切手にもなっている.飼育が比較的容易で,においさえ許される環境であれば,初めての人でも簡単に飼育できる. 成長が速く,25℃では卵から幼虫がふ化して成虫になるまで約2週間.北海道では短い夏の間に成長、繁殖し、短日条件を受けて成虫で休眠に入る。成虫の脳が大きいので、様々な手術が可能である。 文責:志賀 向子


ナミニクバエ(Sarcophaga similis)

 ニクバエは卵胎生であり、卵ではなく幼虫をそのまま産む珍しい昆虫です。 たいていは動物などの死肉に幼虫(うじ虫)を産みつけますが、夏場に放置していた料理などにも幼虫が産みつけられていたなんて話も…。
 当研究室で飼育しているナミニクバエは大きいものでは1.5cmほどになる少し大きめのハエで、ユーラシア大陸の温帯、亜寒帯地域に広く分布しており、日本では北海道から九州で見られます。 野外ではゴミ箱や便所付近に生息したりするそうですが、当研究室のハエは水、角砂糖、国産鶏レバーを食している贅沢な方々なので汚くはないです(たぶん)。
 幼虫期に感受した日長に応じて蛹休眠に入り越冬し、暖かくなってくると羽化します。 なので主に幼虫の脳を研究しますが、幼虫の脳は成虫に比べると単純なつくりをしているので神経の形態の観察などは比較的容易です。

参考:Wikipedia
文責:M2 大江勇太郎
写真:B3 平田和音


オオクロコガネ(Holotrichia parallela)

 オオクロコガネ Holotrichia parallela はコガネムシ科に属する昆虫で,光沢のない前翅(鞘翅)を持ち黒色の体色をしているという地味な部類のコガネムシである. 生活史は1年1化で,成虫は6月頃に出現し始め10月まで野外で見られる.7月~8月の間に非常に活発に交尾を行い産卵する.幼虫は夏の間に孵化し3齢幼虫で越冬し翌年の春,土の中で蛹化・羽化する.食性は幼虫の間は植物の根を食べ成虫になると樹木草本の生葉を食し,特にサクラやサツマイモなどを食害する農業害虫として知られている.
 成虫は昼間は土の中で過ごし,夜になると地上に現れ樹上の葉を摂食したり交尾をしたりという一般的な夜行性コガネムシと同様の行動をするが,他のコガネムシと大きく異なる点としてその出現周期が2日に1回であるという点がある.地球上の環境刺激の多くは24時間周期で変化するため多くの生物は24時間周期のリズム(概日リズム)を持つが,本種は48時間周期のリズム(概倍日リズム)を持つ珍しい生物である.非常に珍しい生態を持つ本種であるが何故本種が2日のリズムを獲得しているのかについては全くわかっていない.

参考文献: 岡島秀治,荒谷邦雄,日本産コガネムシ上科標準図鑑,学研教育出版,2012年

文責:河崎 裕太


ホソヘリカメムシ(Riptortus pedestris)

ホソヘリカメムシ(学名:Riptortus pedestris)は
東南アジアを中心に広く分布するカメムシ目昆虫で、
馴染みのある六角形のカメムシではなく、
縦長のスリムな体型をしています。
飛翔するとこの模様が現れ、ハチに似て見えます。
臭いもいわゆる「カメムシ臭」ではなく、
(当実験室では数百匹単位で飼育していますが…)
まったく臭くありません。
(臭いの感じ方には個人差があります。)

ホソヘリカメムシはエンドウ、インゲン、
大豆などを食害します。
特に大豆の害虫として悪名高いカメムシです。
卵から出たばかりの1齢幼虫は、
何も食べずに脱皮し、2齢幼虫になります。
幼虫はアリに擬態して身を守っていると
考えられています。
孵化後20~30日で1齢から5齢となり、
そして羽化して成虫となります。




綱:昆虫綱Insecta 目:カメムシ目Hemiptera 科:ホソヘリカメムシ科Alydidae

安永智秀:「日本原色カメムシ図鑑」全国農村教育会(1993)
藤崎憲治:「カメムシはなぜ群れるの?」

文責:西吉利(Xijier), 鈴木健右


チャバネアオカメムシ(Plautia stali)

チャバネアオカメムシ(Plautia stali)は、カメムシ目カメムシ亜目カメムシ科カメムシ亜科、その名の通り翅が茶色い緑色のカメムシである。
カメムシと聞いて一般的にイメージされるカメムシ、THEカメムシ、カメムシの王道、多くの人が一度は出くわしたことがあるアイツである。

成虫の体長は10-12mmほど、広食性で寄主植物は100種以上確認されている。
チャバネアオカメムシは果樹を害する虫として知られ、ミカン、カキ、ウメ、モモなどの汁を吸ってしまう。
汁を吸われた果実は売り物にならないためたいそう嫌われており、昔から駆除の研究も盛んに行われていた。
ちなみに、本来繁殖に必要な餌は種子の汁であり果実の汁は必須ではない。カメムシと会話することができたら、畑や果樹園からは是非ともお引き取り願いたい。

また、みなさんご存じの通りコイツは身を守るために悪臭を発する。
触れなければ臭いは出さないため研究の際にはそれほど弊害はないが、臭い汁が手につくと水洗いでは落ちないため注意したい。
長く飼育していると、臭いを感じなくなったり嫌じゃなくなったりするらしい(個人差があります)。

古くから果樹の害虫として嫌われ、日本ではヘコキムシやヘッピリムシ、英名でもstink bug(臭い虫)と呼ばれるなど、とことん人間と相性の悪い虫ではあるが、本研究室では光周性研究のモデル昆虫として存分に活躍させてやりたい。

参考:全国農村教育協会「日本原色カメムシ図鑑」、Wikipedia
文責:B4長谷川

カイコガ(Bombyx mori)

 蚕は節足動物門昆虫綱鱗翅目に属し、正しくは家蚕蛾(カイコガ)と呼ばれている。カイコはもともと野生の状態であったが、人為淘汰のため家畜化された唯一の昆虫である。中国で始まった養蚕は日本に伝わり、古くから「おかいこさま」と呼ばれ愛敬を示されてきた。

 カイコは卵から孵ると体長一mmほどの幼虫となり、桑の葉を食べながら約3週間のうちに脱皮を4回し繭を作り始める。繭の中で蛹となり10~20日で成虫となる。成虫となったカイコは口がなく何も食さず交尾、産卵し2週間ほどで息絶える。卵には休眠卵(黒紫色)と非休眠卵(乳白色)があり、これは母親が卵や幼虫期に経験した日長に左右される。お世話をしてやらないと生きていけない、翅はあるが飛べない、懐っこくていじらしい生き物である。

参考文献:「養蚕」実教出版 改変版
文責:佐藤瑞華



ヨーロッパモノアラガイ(Lymnaea stagnalis)

こいつだけ昆虫ちゃうやんか

成貝の大きさは1~4cmほど。

雌雄同体であり、他個体と交尾すると(あるいは交尾をしなくても)寒天質の袋に入った数個~数十個の卵を卵塊として産み付ける。
卵は2~3週間で孵化し(稚貝の大きさは1~2mm程)、孵化から2~3か月ほどで成熟、繁殖する。

食性の幅は広く、藻類や緑葉、動物の死骸などを食べる(当研究室では小松菜の緑葉を餌として与えている)。

ヨーロッパモノアラガイは日本には生息していないが、
その近縁種であるヒメモノアラガイ(Austropeplea ollula)やモノアラガイ(Radix auricularia japonica)は日本各地に分布している。

流れの緩やかな淡水域の水辺(水田、小川、ため池など)に生息し
水面を逆さになって這うという行為を日常的に行うことが知られている(とてもかわいい)。

過去には学習や記憶に関する神経系の解析、日長の変化に対応した産卵行動(およびホルモン分泌量)の変化の研究などに用いられてきた動物である。
軟体動物はいいぞ

軟体動物門 腹足綱 有肺目 モノアラガイ科 (Mollusca Gastropoda Pulmonata Lymnaeidae)
引用:Wikipedia 文責:神谷(B4)