染色体構造機能学研究室

Laboratory of Genome Structure and Function

教授
小布施 力史 (Chikashi OBUSE)
mail obuse @ bio.sci.osaka-u.ac.jp
准教授
長尾 恒治 (Koji NAGAO)
mail nagao @ bio.sci.osaka-u.ac.jp
特任助教
磯部 真也 (Shin-Ya Isobe)
mail s.isobe @ bio.sci.osaka-u.ac.jp
研究分野

分子細胞生物学

所属

理学研究科

ロケーション

豊中地区 理学部棟 C511

研究内容

わたしたちの体は、同じ遺伝情報を持つ60兆個もの細胞が、2万種類ある遺伝子の機能発現を組み合わせて、200種類以上の細胞に分化することでできあがっています。遺伝情報を担うDNAは、様々なタンパク質やRNAと結合してクロマチンを形成して核の中に収められています。わたしたちの研究室では、おもにヒト細胞について、遺伝情報を担うDNAがどのように様々なタンパク質やRNAと協働して、核の中に納められ、次世代に受け継がれ、適切に使われるのかについて、分子レベルで明らかしようとしています。そのために、遺伝子操作やゲノムエディティング、タンパク質の機能構造解析、顕微鏡を用いたイメージング、さらに、次世代シーケンサーや質量分析器を用いたオミクスなど様々な手法を取り入れて、アプローチしています。

エピゲノムはどのように次の世代に伝えられ、どのように書き換えられるか

近年、細胞の分化や刺激に応答した遺伝子の機能発現は、DNAのメチル化、ヒストンの化学修飾など、クロマチンにつけられた印、いわゆるエピゲノムにより支配されていると考えられるようになってきました。これらの印は、DNAの塩基配列を書き換えることなく、次の世代に伝えたり、書き換えたりすることが可能です。受精卵というたった一つの細胞は、様々な細胞を経て最終的な細胞に分化します。この間、DNAに書かれた遺伝情報は細胞分裂にともなって正確に受け継がれながら、分化を方向づけるエピゲノムは書き換えられ、一方で、分化した状態を維持するためにエピゲノムが細胞周期と連動して正確に次の世代に受け継がれる必要があります。わたしたちは、ヒト細胞から独自に見出したタンパク質を手掛かりに、これらの仕組みについて解明しています。

エピゲノムの情報がどのようにクロマチンの高次構造に変換されるか

エピゲノムを担うDNAのメチル化や、ヒストンの化学修飾は、単なる印であり、この印がクロマチンの高次構造に変換されることによって遺伝情報の発現制御をしていると考えられています。例えば、凝縮したクロマチン構造は、転写因子がDNAに近づくことを妨げて転写を抑制していると考えられています。わたしたちは、エピゲノムの印がどのようにしてクロマチン構造に変換されるのか、その仕組みの解明についても取り組んでいます。例えば、女性が持つ不活性化X染色体は、まるごと1本凝縮したクロマチン構造をとっています。わたしたちは、自ら見つけたタンパク質がエピゲノムの印を読み取ってRNAと協働して、この凝縮したクロマチン構造を形作っていることを世界で初めて明らかにしました。

エピゲノムを司る仕組みの破綻による疾患

エピゲノムを司る仕組みの破綻は、様々な疾患を引き起こすことがわかってきました。例えば、不活性X染色体の凝縮に関わるタンパク質の機能不全は、ある種の筋ジストロフィーを引き起こすことが明らかになっています。わたしたちが行っているエピゲノムの仕組みの理解は、病因・病態の理解につながり、ひいては、診断や治療に貢献することが期待されます。

オミクスを用いたエピゲノム研究

わたしたちの研究室では、ゲノムの配列情報を活用した網羅的な解析法を駆使して研究をしています。その一つの手法である、質量分析器を用いれば、ごく微量のタンパク質さえあれば、その名前がわかります。この技術を使ってエピゲノムの仕組みに関わる新しいタンパク質を次々と発見しています。また、次世代シーケンサーは、研究室レベルでヒトのDNA全体を解読できる装置です。この装置を使うと、わたしたちが発見したタンパク質がクロマチン上のどこでどのような機能を果たしているか知ることができます。

図0 DNAはヒストンなどのタンパク質や、RNAとともにクロマチンを作って核の中に収められている。

図1 女性の不活性化X染色体 (矢頭)とそのエピゲノム情報

図2 網羅的解析のための装置

参考文献

Shin-Ya Isobe, Shin-ichiro Hiraga, Koji Nagao, Hiroyuki Sasanuma, Anne D. Donaldson, Chikashi Obuse Protein phosphatase 1 acts as a RIF1 effector to suppress DSB resection prior to Shieldin action. Cell Reports 36 , 109383 - (2021)

Isobe S.Y., Nagao K., Nozaki N., Kimura H., Obuse C Inhibition of RIF1 by SCAI Allows BRCA1-Mediated Repair. Cell Reports 20 , 297 - 307 (2017)

Nozawa R.S.*, Nagao K.*, Igami K.T.*, Shibata S., Shirai N., Nozaki N., Sado T., Kimura H., Obuse C. *equal contribution Human inactive X chromosome is compacted through a polycomb-independent SMCHD1-HBiX1 pathway. Nature Structure & Molecular Biology 20 , 566 - 573 (2013)

Nozawa R.S., Nagao K., Masuda H.T., Iwasaki O., Hirota T., Nozaki N., Kimura H., Obuse C. HP1alpha from mitotic chromosome arms through Aurora B activation. Nature Cell Biology 12 , 719 - 727 (2010)

Kiyomitsu T.*, Iwasaki O.*, Obuse C., Yanagida M. *equal contribution Inner centromere formation requires hMis14, a trident kinetochore protein that specifically recruits HP1 to human chromosomes. Journal of Cell Biology 188 , 791 - 807 (2010)

Obuse C.*, Iwasaki O.*, Kiyomitsu T., Goshima G., Toyoda Y. and Yanagida M. *equal contribution A conserved Mis12 centromere complex is linked to heterochromatic HP1 and outer kinetochore protein Zwint-1. Nature Cell Biology 6 , 1135 - 1141 (2004)

野澤竜介、小布施力史 ヘテロクロマチンの形成メカニズム 実験医学 39 , 1599 - 1604 (2021)

長尾恒治、野澤竜介、小布施力史 バー小体の正体 - HBiX1-SMCHD1複合体によるヒト不活性化X染色体の凝縮. 実験医学 31 , 1771 - 1775 (2013)

野澤竜介、長尾恒治、小布施力史 ヒトHP1結合タンパク質のプロテオーム解析からみえてきたHP1の新機能 - HP1はPOGZと協調してAurora Bキナーゼの活性化に寄与する- 実験医学 28 , 2983 - 2987 (2010)

野澤竜介、小布施力史 ヘテロクロマチン結合因子とその機能 実験医学 27 , 123 - 130 (2009)

連絡先

大阪大学大学院理学研究科生物科学専攻
染色体構造機能学研究室
〒560-0043 大阪府豊中市待兼山町1-1 C511
Tel 06-6850-5812
E-Mail obuse@bio.sci.osaka-u.ac.jp

http://www.bio.sci.osaka-u.ac.jp/bio_web/lab_page/obuse

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