RNA生体機能研究室

Laboratory of RNA biofunction

教授
廣瀬 哲郎 (Tetsuro HIROSE)
mail hirose@fbs.osaka-u.ac.jp
特任講師
山崎 智弘 (Tomohiro YAMAZAKI)
mail tyamazaki@fbs.osaka-u.ac.jp
特任講師
二宮 賢介 (Kensuke NINOMIYA)
mail k-ninomiya@fbs.osaka-u.ac.jp
研究分野

分子細胞生物学

所属

生命機能研究科

ロケーション

吹田地区

研究内容

今世紀初頭のポストゲノム解析によって、ゲノムの大部分を占める非コード領域から大量のノンコーディングRNA(ncRNA)が産生されていることが明らかになり、その機能に大きな注目が集まっています。私たちの研究室では、ncRNAの生体機能を明らかにし、その働きを規定する新たな遺伝暗号ルールを解明することによって、ゲノム機能概念を再構築することを目指しています。特に、これまで私たちが明らかにしてきたncRNAが誘導する相分離現象による細胞内構造体の形成機構やその役割について、基盤的な分子・細胞生物学研究に生物物理学や情報科学などの手法を取り込んで研究しています。

ノンコーディングRNAの暗号解読

ヒトゲノムの中でタンパク質の情報をコードしている領域は全体の2%にすぎません。そして残りの98%の非コード領域から数万種類ものncRNAが産生されています(図1)。タンパク質遺伝子は、教科書に出てくる遺伝暗号に基づいて働きますが、その暗号が通用するのはゲノム中のたった2%です。一方で、ncRNAが機能するためにどのような配列ルール(=暗号)が必要かは謎のままです。そこで私たちの研究室では、ncRNAの働きを規定する新たな遺伝暗号の解読を目指して研究を進めています。ncRNAは、例外なく複数のRNA結合タンパク質と複合体を形成して作動装置を形成しています。私たちは、ncRNAの作動装置を形成するタンパク質がどのようなncRNA配列や構造を認識しているのか、さらにそうした配列は進化上どのように獲得されてきたのかなどを明らかにし、ncRNA機能を規定する新しい遺伝暗号(ncRNA暗号)を解読しようとしています。

ノンコーディングRNAが誘導する細胞内相分離の解析

ncRNA暗号が規定している機能として、私たちはncRNAによる細胞内構造体の構築機能に注目しています。真核細胞の核内には膜に包まれていない非膜性構造体が多数存在し、重要な機能を果たしています(図2)。このうちいくつかの構造体がncRNAを骨格として構築されることが私たちの研究によって明らかになりました(図3)。最近これらの非膜性構造体は、液滴やゲルのような性質を持ち「液-液相分離」と呼ばれる物理現象によって形成されることがわかってきました。つまりncRNAは、核内空間で相分離を誘発するシード分子として働いているようです。そこで私たちは、相分離を介して形成される巨大で秩序だった非膜性構造体の構築機構、特にそれを規定するncRNA暗号の解読を目指しています。

細胞内相分離の意義に関する研究

相分離は膜を使わずに細胞内空間を区画化する巧妙な機構です(図3)。そこで相分離によって形成された構造体内でどのようなことが起こっているのか、RNA分子を構造骨格として用いる意義は何か、ストレスや細胞分化などの条件下で相分離がどのように制御されているか、そしてどのような生理現象の制御に関わっているかなど、謎に満ちた相分離現象をRNA機能を通して解明しようとしています。

図0 ポストゲノム解析によってヒトゲノムの98%を占める非コード領域から数万種類のncRNAが産生されていることが明らかになった。その機能はほとんど未知のままである。

図1 哺乳類細胞核の非膜性構造体の模式図

図2 ncRNAによる非膜性構造体の構築機能。ncRNAが一群の天然変性タンパク質を集約して相分離を誘発し非膜性構造体を形成する。形成された構造体の働きとして、反応るつぼ、係留、構造ハブなどの制御機能が提唱されている。

参考文献

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連絡先

〒565-0871 吹田市山田丘1-3
大阪大学大学院 生命機能研究科 RNA生体機能研究室
TEL:06-6879-4675

http://hirose-lab.com

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