真核生物の分子遺伝学I 2013年度 金曜2限、理学部D301講義室
升方久夫 分子遺伝学講座 理学部C511, masukata@bio.sci.osaka-u.ac.jp
生命の連続性は細胞が増殖により自らと同じ細胞をつくることにより維持されている。この連続性を支えるしくみが「遺伝」である。この講義では、遺伝のしくみを分子レベルで理解することを目的とする。遺伝情報の実体はDNAであり、DNAは細胞内では「染色体」という形をとっている。染色体は正確に複製され、確実に娘細胞に伝えられていかなければならない。さらに遺伝情報の発現制御が実際の細胞では重要となる。これらの反応を最新の研究成果にもとづいて学んでいく。特に近年めざましく発展している真核生物の研究を中心にして多様なシステムを理解し、それらの本質を考える。
MBG「Molecular Biology of the Gene」第5版、J. Watson著、Benjamin Commings(7,050円)
MBC「Molecular Biology of the Cell」第4版、B. Alberts 著、Garland Science(9,055円)
G8「遺伝子」第8版、B. Lewin著、菊池等訳、東京化学同人(10,000円)
「細胞の分子生物学」第3版、 B. Alberts 著、中村桂子訳、ニュートンプレス(21,000円)
生物科学専攻 升方久夫
masukata@bio.sci.osaka-u.ac.jp:いつでも質問受付け中
オープンオフィス:火曜日4限5限(理学部C511:升方教授室)
「Essential細胞生物学」第2版B. Alberts他著 中村桂子ほか訳 南江堂8000円
「細胞の分子生物学」第4版B. Alberts著 南江堂20000円
「Molecular Biology of THE CELL(第4版)」 Bruce Alberts他、10000円
「遺伝子」第7版B. Lewin著 菊池あき彦ほか訳 東京化学同人 15000円
「分子生物学」柳田充弘ほか著 東京化学同人 3200円
「わかりやすい分子生物学」菊池あき彦ほか著 丸善 5800円
私たちの住む世界は、物理・化学の法則に基づいて動いている。生物(生命)もこれらの法則の支配を免れるものではない。しかし同時に生物(生命)はこの世界の重要な構成要素のひとつである。現在の地球を作り上げたのは生物であるといっても過言ではない。この数十年間に生命科学(分子生物学)は急速な発展をとげ、生物に対する知識は50年前と比べて比較にならないくらいに増大しまた微細になった。しかし、いまだに生命の本質を理解することはできていない。この講義によって、生物を構成する物質とその性質(構造・機能)を学び、さらに生命とは何かを考える機会になって欲しい。
理学部では何を研究しているのか?
1.生命の本質は何か?
生きていることのしくみを明らかにしたい?
細胞・個体の普遍的原理
2.いろいろな生物・生命現象の発見と解明
生物の多様性
ある日の学生食堂での会話
A、近頃は何でもDNAで決まってるらしいな?
B、さあ~?DNAって、なんやった?
1.DNAとは何か?
どういう物質か?かたちは?働きは?
2. DNAはどういうしくみで維持されるか?
変化と維持のしくみ・複製
3. DNAがすべてを決定するのか?
DNAの情報で決まらないこともある!
DNAという言葉は今までに聞いたことがあったけど、どんなものなのか、どんな働きをするのかはほとんど知らなかった。今回のスーパー講座で専門的なことからクローンのように聞いたことがあるものまで詳しく話を聞くことができてよかった。難しい内容だったので全部はわからなかったけれど、カラーの資料やムービーもあって分かりやすかったし、先生の話も難しい内容なのに分かりやすく話してくれたのでとても勉強になった。中でもガン細胞については、ほとんど知らなかったことをたくさん聞くことができたので驚くことが多かった。高校での授業の他に大学の先生の話を聞いて、キャンパスを自転車で移動することや理学部がどんなところなのか、そして、研究内容からその先の進路、将来どんな職業につくことができるのかまで詳しく話してもらえたので、とても進路の情報として役に立った。
私は今までDNAという言葉をよく聞くことがあったけど、DNAが一体どんなものかについて全然わかりませんでした。授業で生物を選択していないので、今日、話を聞いて初めて聞くことばかりでとてもおもしろかったです。DNAはものすごいスピードで鎖をつくって合成されているのにその際に間違いがあると校正機能で間違いを直して正しく合成されているなんてすごいなあと思いました。また、DNAが紫外線に関係していて危険にさらされているという話もとても興味深い話でした。長さ2mのDNAが核の中に入るために、タンパク質という聞きなれた物質が関わっていることも思ってもみませんでした。染色体の話では、女子は男子の2倍の性染色体をもっていて、都合が悪いから1本が不活性になるという話が印象に残っています。そして、染色体が遺伝子の発現を左右するということもわかりました。最近耳にすることが多くなったクローンについての話も聞くことができて本当によかったと思います。クローン技術がすべての動物において使用できる訳ではないことは今日はじめて知り、特に、ネコの話はびっくりしました。そして同時に染色体というものが簡単には学びきれない複雑なものなんだなあと感じました。でも、そういう話は私にとってとても新鮮なものだったし、普段学んでいる化学や物理とはまた違ったおもしろさが発見できたと思います。
生きていると死んでいるとの違いってなんだろうと思った。DNAの複製のビデオはとても分かりやすかった。1分間に1,000個の塩基を合成し続けるのはとてもはたらきものですね。自分が犯した10万分の1の間違いを自分で校正するなんてよく出来ていると思う。桁が大きすぎてあまり実感はないですが。どうしてそんなことが出来るのか不思議で、さすがDNAは不思議です。ガンのしくみについてもDNAの異常が原因だとわかり、ガンを抑制する遺伝子が壊れることによって、自分でガンを作ることを止められないなんて、なにか自ら破滅へ向かっているみたいです。合成されるタンパク質が違うから性質が違う、そして、ゲノム上での遺伝子の大部分がはたらいていないのはおもしろいと思った。2mのDNAが5μmの中に入っているなんて信じられない話です。DNAが同じでも違うものになることがわかった。DNAの変化が進化を生んで、人間をつくってきたすごいと思いました。
自分の進路とは無縁な内容の講座であったがたいへん興味深かった。もっと難しい話が出てくるかと思っていたが、噛み砕いて話をしてくださったのですごくよくわかった。生物学に対して自分は勘違いをしていた。ただ、科学的に人間の体を解体していくようなものだと思っていたが、人間存在の理由、生命の本質など哲学めいた側面を持っている学問だとわかった。DNAの構造、性質など少し難しく科学らしい内容がメインだったが、その中で最も驚いたことは「DNAとガンの関係」だった。ガン発生の理由が老化によるガンを抑制している遺伝子が壊れることによるものだということに驚いたし、染色ペインティングによってガン細胞の染色体への異常がすごく分かりやすかった。近年の生物学は非常に進歩しており、DNAを少しいじることによって、いろいろな場面で便利になったりしているが、クローン作成などは生命を弄ぶ行為になりかねないと思う。これからの生物学はその点に注意をおいていかなければいけないのだと考えさせられた。生物学は多様性にとんだ学問で、その多様性のお陰でいかなる状況におかれても生命が死に絶えてこなかったと話されていた。たいへん奥が深く無限の可能性を秘めた学問だと思った。
(c)2006 Labolatory of Molecular Genetics