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教育・講義関連情報

1.学生のみなさんへ

『教育とは学生に生命(いのち)をふきこむことである』とは、昭和初期に独自の教育学体系を樹立したある教育学者の言葉です。彼は当時の軍国主義に厳として異を唱え、獄死した希有の学者でもあります。彼のコスモポリタンとしての魂の叫びは、現代教育のあり方にキラ星の如く輝く、非常に示唆に富むものだと思っています。さて私自身、言うまでもなく最高学府としての大学教育の使命は、優秀な人材を広く社会に輩出していくことにあると考えています。今日、科学技術に限らず、政治・経済等、社会的・文化的活動は急速なグローバル化の波にさらされ、あらゆる問題が地球的規模の広がりを見せています。さらに前世紀末から今世紀にかけてのIT革命により、地球上で勃発する事件は世界のどこにいても瞬時に伝達され、人々がリアルタイムで共有し合うようになりました。このような時代に生きる我々は、今まで直面したこともないような問題をどのように乗り越えていけばよいのでしょうか?私はここにこそ、最高学府としての大学教育の使命があると考えています。高校教育までは、学生のみなさんはたとえばある設問があり、それに対して模範的な回答さえすればよかった(しかも決められた時間内に!)、つまり「設問回答型」人間でよかったわけです。しかし大学教育からは自らが問題を提起し(あるいは疑問を持ち)、それに対していろいろな角度からのアプローチを試みる中で解決の糸口をつかんでいく、つまり「解決志向型」人間の育成が求められています。そこにはこれしかないという一問一答の解決方法はありません。自らがあれこれと悩み、調べ、また他人と議論する中で、多種多様な答えを導き出していくしかないのです。このような教育訓練を受けることが、未だかつて直面したこともないな難問に立ち向かっていく人間を育てると考えています。そのためにも学生と語り合う中で、決して型どおりのやり方・回答をおしつけない、遠回りのようであっても最後まで考えさせて努力させる、そのような教育をするように心がけています。大阪大学に入学してくる学生のみなさんは確かに「学力点(試験の獲得点数)」は素晴らしいのですが、真の学力(学びを志向する力、学び続けていく力)が脆弱である、というのが、私の率直な印象です。日々の学びの中で様々な疑問を落ち、新しい事柄を自らが学んでいく力(ちから)を培っていくことこそが大切です。私自身も日々惰性に流されないように、「日に日に新たに また日に新たに」(中国古典「四書五経」『大学』から)との気持ちで精進していきたいと思っています。そして少しでもみなさんのお役に立てるならば、そのこと自体が大学教育に携わる私の幸せです。最後に私の座右の銘を記しておきます。『学は光、無学は闇。知は力、無知は悲劇』

2.2023年度の担当講義

2-1.講義科目一覧

共通教育「生物学序論」1年次春夏学期
「基礎生物学実験」1年次春夏学期
「基礎生物学実習」1年次秋冬学期
理学部講義「演習A」1年次春夏学期
「演習B」2年次秋冬学期
「演習D」3年次秋冬学期
「生物化学B」2年次秋冬学期
「生物学実験(専門)」3年次秋冬学期
理学研究科「生物科学特論F8」春夏学期

2-2.講義内容(シラバス)

「生物学序論」
開講時期1年次春夏学期 月曜1限
授業の目的、ねらい生物科学の内容は多岐にわたるが、ここでは主に細胞(代謝を含む)・組織・器官・個体・集団などマクロレベルにおける生命現象の諸様相を学び、生物科学の概要の把握を目指す。主にミクロ(分子)レベルでの生命現象を扱う「生物科学概論B」の基礎となるものであり、また、それらと相補的な授業として位置付けられる。
授業の計画、内容と目標マクロレベルの生命現象について、基礎事項の習得を目指すと共に、生物に対する理解を深める。あわせて、生物学的な思考、探究方法を学ぶ。 資料については適宜配付するとともに、授業で使用した全資料はCLEから入手可能である。また学習の便宜を図るために、講義ノートはホームページ上に公開している。
1)細胞
2)代謝
3)呼吸によるエネルギー変換
4)光合成によるエネルギー変換など
成績評価の方法CLE掲載の課題提出により判断
教科書『生物学入門(第3版)』(東京化学同人)
参考図書ssential 細胞生物学(南江堂)、Brock微生物学(オーム社)、ヴォート基礎生化学(東京化学同人)、ほか随時提示

講義ノートへのリンク
配布資料は「CLE授業支援システム」で公開中

「基礎生物学実験」
開講時期1年次春夏学期
月・木曜日の3-5時限(午後1時から5時50分まで)
実験内容プランクトンの観察
「基礎生物学実習」
開講時期1年次秋冬学期
水・木曜日の3-5時限(午後1時から5時50分まで)
実験内容プランクトンの観察
「演習A」
開講時期1年次春夏学期
履修対象生物科学科  1年次
講義内容本演習では「光合成色素の分離実験」を行う。光合成を盛んに行っている緑葉はクロロフィルとカロテノイドを含む。葉緑体内に存在するこれらの色素により吸収された太陽光は最終的に化学エネルギーへと変換され、二酸化炭素と水からブドウ糖が作られる。光合成色素の分離にはさまざまな手法があるが、ここではスピルリナ(藍藻の1種)の粉末から有機溶媒によって色素を抽出、シリカゲルを使った簡易クロマトグラフィーにより分離する。その後、分取した色素溶液の吸収スペクトルを測定する。約1時間半から2時間くらいで終了予定である。
教材資料を配布する。
参考ホームページ生理活性脂質データベース(カロテノイド carotenoid)
「演習B」
開講時期2年次秋冬学期
履修対象生物科学科  2年次
講義内容本演習では、英語教科書の輪読形式で進めていく。前もってしっかりと語句等を調べ、演習に臨んでほしい。少人数制授業を活かし、逐語訳後に解説、重要な語句等の説明を行う。進むペースは遅くてもかまわない。あくまでも読解力の基礎をつけることが目的であり、前もって日本語訳をレポート用紙に書いてきて発表する必要はない。その場で、日本語に訳していって欲しい。用いる教科書(および学習する章)は以下のとおりである。
教材Buchanan et al. eds. 「Biochemistry & Molecular Biology of Plants」 / Chapter 12 "Photosynthesis"
「演習D」
開講時期3年次秋冬学期
履修対象生物科学科  3年次
講義内容本演習では、光合成研究の歴史の中で、2つの光化学系(タイプ1と2)の概念がどのように成立し、教科書に記載されるZスキーム(Z模式、Z機構ともいう)として結実したかについて学ぶ。以下の論文3報はけっして難しくはない。受講する学生にはまず本文を読み、わからない点については配布資料(解説)を参考にしながら、教科書・辞書を用いてじっくりと調べることを望みたい。また生物学実験(専門)では論文(3)を概説するので、関連する課題を提出すること。
1)Function of the Two Cytochrome Components in Chloroplasts: A Working Hypothesis, Hill, R. and Bendall, F. (1960) Nature 186, 136-137
(葉緑体内に存在する2種類の光合成単位(光化学系 II と I)が、どのように結びつけられているかについての作業仮説を提唱した論文。)
2)Analysis of photosynthetic reactions by the use of monochromatic light, K. Tagawa, H. Y. Tsujimoto and D.I. Arnon (1963) Nature 199, 1247-1252
(葉緑体内に存在する2種類の光化学系 (II と I)が、異なる光で活性化されることを示した有名な論文。)
3)Reconstruction of the Chloroplast Noncyclic Electron Transport Pathway from Water to NADP with Three Integral Pprotein Complexes, Lam, E. and Malkin, R. (1982) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 79, 5494-5498
(光化学系 II と I が直列につながっていることを証明した論文で,膜タンパク質の単離とその再構成実験という非常にオーソドックスな手法を用いた報告)

参考資料へのリンク(大阪大学CLEのみからダウンロード可能)

「生物化学B」
開講時期2年次秋冬学期 月曜 1時限
履修対象生物科学科  2年次
履修条件生物化学Aを履修しておくことが望ましい
目的エネルギー変換における物理化学的な考え方をみ身につける
講義内容1.呼吸によるエネルギー変換
2.光合成によるエネルギー変換
教科書適宜資料を配布する
参考書ヴォート基礎生化学など
成績評価「中間試験40%」、「期末試験40%」、「授業への参加態度(復習テストと課題提出を含める)20%」により評価する。

講義ノートへのリンク(未改訂、2022年度版です)
配布資料はCLE授業支援システムからダウンロード可能

「生物学実験(専門)」
開講時期3年次秋冬学期
実習内容「光化学系Iの電子伝達活性の測定」
光合成(Photosynthesis)は生物が光エネルギーを生物学的に利用できる形のエネルギー(電気化学的エネルギー)に変える反応である。植物では葉緑体チラコイド膜に存在する光合成色素(クロロフィルやカロテノイド)に吸収された光エネルギーが、一連の酸化還元反応により最終的に高い還元力NADPHと高エネルギー産物ATPに変換される(光エネルギー変換反応という)。この光エネルギー変換反応には、多くの物理的、化学的素過程が複雑に組み合わさっている。本実習では、色素間励起エネルギー移動、光化学系I反応中心のNADP+光還元活性を測定する。使用する機器類・手法はきわめて簡便であるが、光合成電子伝達系の反応スキームを理解するとともに、膜タンパク質の可溶化・取り扱い方についても学習する。

実習テキストへのリンク(大阪大学CLEのみからダウンロード可能)

「生物科学特論F8」(2023年度開講)
開講時期 春夏学期
講義内容 1.光合成反応(1):光エネルギー変換過程の概要
2.光合成反応(2):反応中心タンパク質複合体の構造と機能
3.光合成反応(3):多様なアンテナ系と光適応機構

講義ノートへのリンク(未改訂、2021年度版です)
配布資料はCLE授業支援システムからダウンロード可能

2-3.講義資料一覧

共通教育
「生物学序論」1年次春夏学期講義ノートと配布資料(CLE)
「基礎生物学実験1 生物1年次春夏学期テキストのみ、資料なし
「基礎生物学実習」1年次秋冬学期テキストのみ、資料なし
理学部講義
「演習A」1年次春夏学期資料あり(CLE)
「演習B」2年次秋冬学期資料あり(CLE)
「演習D」3年次秋冬学期資料あり(CLE)
「生物化学B」2年次秋冬学期講義ノートと配布資料(CLE)
「生物学実験(専門)」3年次秋冬学期資料あり(CLE)
大学院理学研究科
「生物科学特論F8」春夏学期講義ノートと配布資料(CLE)
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