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特定領域 膜輸送ナノマシーン 研究代表者 中間報告
特定領域研究第8グループ 平成15年9月12日 |
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特定領域研究第8グループ報告
Na+/H+アンチポーターの構造・作動機構と制御の生物多様性と統一性 2. 研究代表者氏名 金澤 浩・大阪大学理学研究科・教授 3. 組織分担者氏名 福山恵一・大阪大学理学研究科・教授 井上弘樹・大阪大学理学研究科・助手 中村徳弘・大阪大学理学研究科・助手 4.これまでの主な研究成果 研究の目的 細胞内Na+ とH+ 環境制御に中心的役割を果たすNa+/H+アンチポーターは生物界に広く存在し、生物種毎に多様な一次構造をもつアイソフォームの存在が明らかになりつつある。しかし、イオン輸送とエネルギー共役、および制御に関して種を超えた統一的機構の存在の可否については不明であり、制御の多様性の全貌も明らかではない。本研究では、細菌、酵母、ほ乳類細胞を比較し、その機能と制御の分子レベルでの機構についてその統一性と多様性を明らかにする。 成果 (1)細菌において最も重要なアンチポーターNhaAのイオン輸送・pHセンサー機構の解明研究開始前に明らかにしていた大腸菌のNhaAに加えて(1-3)、ピロリ菌NhaAのイオン輸送および輸送のpH依存の制御に必至な膜内在性部分を遺伝学的解析を中心に、また大腸菌とのキメラ体の作成により究明した(4-6)。その結果、4つの膜貫通ドメイン(TM4, 5, 10,11)にイオン輸送に必至な残基(図1,水色、橙色表示)が集中しイオン透過経路を形成し、アルカリ条件下の活性化調節には第7ループとTM8の残基が(左下図1、緑色表示残基)関与することを明らかにした。 イオン輸送に必至なAsp残基(右図2、D表示)を含むTM4についてすべての残基をCysに置換しNEMの結合能を指標にAsp近傍の膜内のチャネル構造の一部を明らにできた(7)。さらにTM4とTM10の空間的関係を明らかにするため、TM10のすべての残基をそれぞれCysに置換した変異体群を作成しイオン輸送に必至な構造のトポロジー解明 を目指している。また、ピロリ菌NhaAの大量精製にも成功し、その生化学的性質を検討し、結晶化の予備実験を行っている。NhaAのイオン輸送経路の詳細な知見は、酵母、ほ乳類のアンチポーターのイオン輸送の機構を解明する上で大きな手がかりになると信ずる。(2)酵母の細胞膜アンチポーター Nha1のイオン輸送と制御の機構:数種の酵母 のNha1をクローン化し構造を決定した(8)。その結果、一次構造は異なるにも関わらず、細胞内ドメインに加えて長大な細胞質ドメインをいずれも有しており、この点でほ乳類のものと良く似た構造を持つことが明らかになった。細胞質ドメインは種間での相同性が低いが一部に6カ所の保存された領域(C1?C6)があることを明らかにした。これらのドメインの機能解析を行った結果、興味深い事実を見いだした。もっとも細胞膜に近接したC1部分16残基は、Nha1の細胞膜局在化に必須な部分とイオン輸送機能に必須な部分で構成されること(9)またC2部分に結合しイオン輸送を正に制御する新規膜蛋白COS3 が存在することを明らかにした(10)。 C1,C2はほ乳類 のアンチポーターとは構造的類似性がない。われわれは、次項で述べるように、ほ乳類アンチポーターNHEでも、分子内位置として酵母のC1,C2に相当する部分にCHP(カルシニューリンホモロガ ス蛋白)(11)が結合することを見いだしており、CHPとCOS3の機能的類似性に注目している。統一的輸送機構の存否を考えるとき、極めて興味深い。酵母Nha1 については細菌との一次構造上相同性はほとんど認められないが、遺伝学的解析から膜ドメイン中央にある3つのAsp残基が細菌のNhaAと同様にイオン輸送に必須であることを最近明らかにできた(12)。この部分とC1,C2の関係がイオン輸送経路形成において重要な点であると新たに指摘したい。現在アンチポート活性を細胞内小胞を取り出して測定するのに成功し、さらに精製蛋白質を再構成する系を構築中である。(3)ほ乳類アンチポーターに結合するCHP蛋白質の機能解析:本研究の前段階でわれわれはほ乳類NHEに結合する新規蛋白CHPを発見し報告したが(13)、その後本特定の班員である若林らによってCHPはNHEの機能必須因子であることが示された(14)。われわれは、この蛋白質がカルシニューリン(CN)との相同性を有することからCNと同様に多機能性蛋白質であることを予測し、その全体像を明らかにすることがNHEのアンチポート機能制御の理解に不可欠と考えた。そこでCHPの結合蛋白を網羅的に解析し、 新規の細胞内モーター蛋白質キネシン、およびアポトーシス誘導性蛋白キナーゼDRAK2を発見した(11,15)(次頁図4)。これらの蛋白質との相互作用を解析し、その機能的役割の一端を明らかにしている(16)。また、CHPのアイソフォームであるCHP2を発見し、腸における高度の発現を見いだし、その生理的役割を予測した(17, 18)。 結果の評価 (1)イオン輸送に必至な構造にAsp残基が一般的に関与する可能性を示した。 (2)膜ドメイン内部のイオン輸送路と制御機構に関わる残基について空間的配置の新知見を得た。(3)真核生物アンチポーターでは制御に関わる親水性ドメインの付加がすでに酵母であったと考えられる知見を得た。(4)イオン輸送の機能促進に関わる輸送体以外の別の蛋白因子の存在を同定し、その寄与の一般的重要性を示唆する結果を得た。(5)ナノマシンの実態を解明する上で必至な結晶化を目指した蛋白化学的解析に目処がたった。これらの点はいずれも今後の発展の基盤となるものであり、評価され得るものと信ずる。 謝辞 当領域による研究支援を得てこれまでの研究が飛躍的に発展する機会が得られたことを感謝する。 引用論文 (1) Inoue, H., Noumi, T., Tsuchiya, T., and Kanazawa, H. FEBS Lett., (1995) 363、264-268. (2) Noumi, T., Inoue, H., Sakurai, T., Tsuchiya, T., and Kanazawa, H. J. Biochem.(Tokyo), (1997) 121, 661-670 (3) Inoue, H., Noumi, T., Shimomura, T., Takimoto, N., Tsuchiya, T.,and Kanazawa, H. Biol. Pharm. Bull.(1998) 21, 1128-1133 (4) Inoue H, Sakurai T, Ujike S, Tsuchiya T, Murakami H and Kanazawa H FEBS Lett. (1999) 443(1):11-16. (5) Inoue, H., Tsuboi, Y., and Kanazawa H. J.Biochem., (2001) 129,569-576 (6) Tsuboi,Y, Inoue,H., Nakamuara,N., and Kanazawa, H., J.Biol.Chem., (2003) 278, 21467-21473. (7) Kuwahara,N., Inoue,H., Tsuboi,Y., Nakamura,N., and Kanazawa,H., Submitted to Biochemistry (8) Kamauchi,,S., Mitsui, K.,Ujike, S.,Haga, M., Nakamura, N., Inoue,H., Sakajo,S., Ueda, M., Tanaka, A., and Kanazawa, H J.Biochem. (2002) 131, 821-831 (9) Mitsui,K., Kamauchi,S., Nakamura,N., Inoue,H. and Kanazawa,H. Submitted to J. Biol Chem. (10) Mitsui,K., Ochi,F., Nakamura,N., Doi,Y., Inoue,H., and Kanazawa,H. Submitted to EMBO J (11) Matsumoto, M., Miyake, Y., Nagita, M.,Inoue, H., Shitakubo, D., Takemoto, K., Ohtsuka, C., Nakamura,N.,and Kanazawa,H. J.Biochem (2001)130, 217-225 (12) Yasui,H., Mitsui,M., Nakamura,N., Inoue,H., and Kanazawa,H. Submitted to Yeast (13) 守谷智恵、根本真吾、下窪大哉、清水利朗、能見貴人、金澤 浩(1995)生化学 67 巻、8号、 (14) Pang, T., Su, X., Wakabayashi, S., and Shigekawa, M. (2001) J. Biol. Chem. 276, 17367-17372 (15) N. Nakamura, Y. Miyake, M. Matsushita, S. Tanaka, H. Inoue, andH.KanazawaJ.Biochem.(2002),132,483?491 (16)Kuwahara,H.,Kamei,J.,Nakamura,N.,,Matsumoto,M., Inoue,H. and Kanazawa,H. J. Biochem. (2003) 134, August issue in press (17) H. Inoue, Y. Nakamura, M. Nagita, T. Takai, M. Masuda, N. Nakamura and H. Kanazawa Biol. Pharm. Bull. (2003) 26, 148-155 (18) Nagita,M., Inoue,H., Nakamura,N. and Kanazawa,H. Submitted to J. Biochem. 5.主な発表論文等一覧表(領域発足後のもの、投稿中を含む) 2001年 1. Keiko Hayami, Takato Noumi, Hiroki Inoue, Ge-Hong Sun-Wada, Takao Yoshimizu and Hiroshi Kanazawa The murine genome contains one functional gene and two pseudogenes coding for the 16 kDa proteolipid subunit of vacuolar H+-ATPase Gene (2001) 273、199-206 2. Hiroki Inoue, Yumi Tsuboi, and Hiroshi Kanazawa Chimeric Na+/H+ antiporters constructed from NhaA of Helicobacter pylori and Escherichia coli:Implications for domains of NhaA for pH sensing J. Biochem., (2001) 129, 569-576 3. Matsumoto, M., Miyake, Y., Nagita, M.,Inoue, H., Shitakubo, D., Takemoto, K., Ohtsuka, C., Nakamura, N., and Kanazawa, H. A serine/threonine kinase which causes apoptosis like cell death interacts with a calcineurin B like protein capable of binding Na+ / H+ exchanger 1 J. Biochem (2001)130, 217-225 2002年 4. Kamauchi, S., Mitsui, K., Ujike, S., Haga, M., Nakamura, N., Inoue, H., Sakajo, S., Ueda, M., Tanaka, A., and Kanazawa, H. 5 U. Tokumoto, S. Nomura, Y. Minami, H. Mihara, S. Kato, T. Kurihara, N. Esaki, H. Kanazawa, H. Matsubara, and Y. Takahashi 6.N. Nakamura, Y. Miyake, M. Matsushita, S. Tanaka, H. Inoue, and H. Kanazawa 2003年 7.Hiroki Inoue, Yutaka Nakamura, Mana Nagita, Tomoyo Takai, Miho Masuda, Norihio Nakamura and Hiorshi Kanazawa 8.Yumi Tsuboi, Hiroki Inoue, Norihiro Nakamuara, and Hiroshi Kanazawa 9.Hiroshi Kuwahara, Junichi Kamei, Norihiro Nakamura, Miho Matsumoto, Hiroki Inoue, and Hiroshi Kanazawa 10.Keiji Mitsui, Fumihiro Ochi, Norihiro Nakamura, Yoshihide Doi, Hiroki Inoue, and Hiroshi Kanazawa 11.Keiji Mitsui, Shinya Kamauchi, Norihiro Nakamura, Hiroki Inoue and Hiroshi Kanazawa* 12.Mana Nagita, Hiroki Inoue, Norihiro Nakamura, and Hiroshi Kanazawa 6.海外、国際学会での発表、シンポジュームの開催, 招待講演等 1.K. Sawada, K. Arii, N. Kuroda, H. Inoue, and H. Kanazawa (招待講演) 2.生体膜輸送蛋白質の作動機構・制御とその構造 シンポシューム開催 3.中村徳弘、三井慶治、鎌内慎也、井上弘樹、金澤浩 (招待講演) 4,三井慶治、越智史博、大垣隆一、中村徳弘、井上弘樹、金澤 浩 5.坪井裕見、井上弘樹、中村徳弘、金澤 浩 6.Kanazawa, H., Mitsui, K., Kamauchi, S., Nakamura, N., Ochi, F., Ohgaki, R., Inoue, H. 7. 生体膜輸送蛋白質の構造と作動機構 シンポジューム開催 8. Norihiro Nkamura, Yoshinori, Teko Hiroki Inoue, Hiroshi Kanazawa 9. Hiroki Inoue, Yutaka Nakamura, Mana Nagita, Norihiro Nakamura, and Hiroshi Kanazawa 10.膜輸送ナノマシンの構造・作動機構とその制御 シンポジューム 開催予定 |
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