新着情報リスト

新着論文

ミスマッチ修復がDNA合成エラーの生じたDNA鎖を識別し、その情報を記憶する仕組みを解明

MutSα maintains the mismatch repair capability by inhibiting PCNA unloading.

Kawasoe Y, Tsurimoto T, Nakagawa T, Masukata H, Takahashi TS.
Elife. 2016 Jul 12;5. pii: e15155. doi: 10.7554/eLife.15155.

要約
細胞が増えるためには、DNAにコードされた遺伝情報をコピーする必要がありますが、このときコピーの誤りが生じることがあります。これを直さずにおくと、遺伝情報の変化(変異)が起こります。ミスマッチ修復は、このコピーの誤りを修復するための重要なDNA修復機構です。
 ミスマッチを直すためには、正しい情報を持つ古いDNA鎖と、誤って合成された新しいDNA鎖を区別する必要があります。鎖の新旧を区別するためには、コピーを取る過程の情報を得ることが必要です。DNA複製の際には、まずPCNAと呼ばれるリング型分子がDNAに装着されます。次にPCNAを足場にDNA合成酵素が結合し、新しいDNA鎖が合成されます。PCNAは役割を終えると速やかにDNAから外されます。PCNAにはDNA合成酵素が結合する面があり、この面を見分けることで、古い鎖と新しい鎖の情報を得ることができると予想されます。PCNAが新旧鎖の情報をミスマッチ修復に伝える分子であるという仮説はこれまで提唱されていましたが、その証明はありませんでした。またPCNAはDNA合成が終わるとすぐDNAから外されてしまうため、PCNAが新旧鎖の情報を持つとしても、どのようにしてそれをミスマッチ修復に伝えることができるのかは謎でした。
 本研究では、ツメガエル卵抽出液をモデル系に使って試験管内でミスマッチ修復を再現し、DNA複製に必要なタンパク質である、複製クランプ(PCNA)が新旧鎖を区別する情報を持つことを実験的に証明しました。さらに、ミスマッチ修復はPCNAがDNAから外されてしまうのを防止して鎖の情報を長時間保持することを発見しました。
 ミスマッチ修復機構がどのようにして新生DNA鎖を識別するのかは、この分野の25年以上にわたる中心的な大問題でした。本研究によって、PCNAが新生鎖識別の目印になっていることが完全に証明されました。さらに、ミスマッチ修復機構が積極的にPCNAに働きかけ、新生鎖の情報を長時間保持する新しい反応が発見されました。これらの研究成果は、ミスマッチ修復の動作原理の理解を大きく前進させ、次の問題、すなわち「PCNAとミスマッチ修復の連携による修復制御のしくみ」という、新しい研究課題を切り開きます。

論文へのリンク
https://elifesciences.org/content/5/e15155

紹介記事
https://elifesciences.org/content/5/e18365

升方研究室ホームページ
http://www.bio.sci.osaka-u.ac.jp/bio_web/lab_page/masukata/