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細胞集団における転写の同期現象の発見と分子メカニズムの解明

Nucleocytoplasmic Shuttling of a GATA Transcription Factor Functions as a Development Timer

Huaqing Cai, Mariko Katoh-Kurasawa, 村本哲哉(Tetsuya Muramoto), Balaji Santhanam, Yu Long, Lei Li, 上田昌宏(Masahiro Ueda), Pablo A. Iglesias, Gad Shaulsky, and Peter N. Devreotes

Science 343, 1249531 (2014).
DOI: 10.1126/science.1249531.

要約
周期的な振動現象は、生命システムの動的挙動の中でもよく観察されるものの一つであり、細胞周期、概日時計や体節形成過程を制御する分節時計など、多くの場面で重要な役割を担っている。細胞性粘菌Dictyostelium discoideumでは、周期的な振動現象の一つとして、cAMP(環状アデノシン一リン酸)の約6分おきの周期的な波によって分化誘導が起こることが知られている。私たちは、GATAファミリー転写因子であるGtaCが、cAMPの波に応じて核と細胞質の間を周期的に行き来していることを発見した。この現象は、GtaCに存在する核移行シグナルと細胞膜上のcAMPレセプターを介したGtaCのリン酸化によって制御されている。すなわち、cAMPがレセプターに結合すると、GtaCの核内での活性化とそれに続く標的遺伝子の活性化が誘導され、その後GtaCは細胞質へと移行する。そこで我々は、転写因子とその標的となる遺伝子csaAの発現動態を同時にライブセルイメージングで解析したところ、cAMPの波の周期に合わせて細胞集団全体での転写の同調が約6分おきに引き起こされるという現象を確認することができた。この発見は、周期的なシグナルが周期的な転写の活性化情報に変換される動的メカニズムを解明したはじめての例である。

「本研究はJohns Hopkins大学のPeter Devreotes教授との共同研究です。当研究室の村本哲哉研究員が生きた細胞の核内において転写の振動現象を見つけていたことがきっかけとなり、共同研究へと発展しました。」

論文へのリンク
http://www.sciencemag.org/content/343/6177/1249531.long

上田研究室ホームページ
http://www.bio.sci.osaka-u.ac.jp/bio_web/lab_page/ueda/index.html




(A)GtaCの局在変化とcsaAの発現動態を同時にライブセルイメージングしたもの。GFP-GtaCの細胞(緑のみ)と転写を計測する細胞(核を赤でラベルした細胞)の2種類の細胞を混ぜ合わせている。3次元撮影した画像をマージして表示。矢印が観察された転写活性化スポット。(分:秒)
(B)GtaCの局在変化と転写活性化のモデル図。緑:核内で活性化状態のGtaC、青:細胞質にあるGtaC、赤:核内に存在するが不活性化状態のGtaC。