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アクトミオシンの収縮力を細胞膜に伝え,細胞変形を仲介する分子を発見した

Talin couples the actomyosin cortex to the plasma membrane during rear retraction and cytokinesis

Tsujioka M., Yumura, S., Inouye, K., Patel, H., Ueda, M., and Yonemura, S.
PNAS (2012) published ahead of print (doi:10.1073/pnas.1208296109)


要約
 多くの細胞は、その機能発現において柔軟に変形する。例えば移動運動する場合、細胞の前端は伸長し、後端は収縮する。また、分裂の際には中央領域が括れて二つの細胞に分かれる。このような細胞の変形は、細胞膜直下でアクトミオシンが収縮する事により起こるが、その収縮力を細胞膜に伝える分子はこれまで知られていなかった。今回我々は、接着斑の構成タンパク質として知られていたtalinに、アクトミオシンと細胞膜を繋いで細胞変形を可能にする新たな機能がある事を示した。細胞性粘菌のtalinホモログの一つであるtalin Aは、細胞後端、分裂溝の膜直下で、アクチン結合ドメインを介してアクトミオシンと共局在した(図A)。この共局在領域周辺の細胞膜は、talinを活性化するPtdIns(4,5)P2に富んでいる。talin A欠損細胞は、後端で細胞膜とアクトミオシンが乖離して尾部を引きずり、細胞分裂ではアクトミオシンからなる収縮環と細胞膜が乖離して分裂に失敗した(図B)。これらの結果から、PtdIns(4,5)P2により活性化されたtalin Aが、アクトミオシンと膜タンパク質に同時に結合して両者を繋ぎ、アクトミオシンの収縮力を細胞膜側に伝えていると予想している。哺乳類の細胞においても、talinの欠損により細胞膜と直下のアクチン骨格層の乖離が起こる事が報告されており、本研究で明らかにされたtalinの新規機能が種を越えて保存されている可能性がある。細胞の変形は、個々の細胞の機能発現に加え、組織全体の形態形成にも関与する重要な現象であり、本研究のような分子メカニズムの解析を更に進めることにより、そのしくみや制御の解明が期待される。

論文へのリンク
http://www.pnas.org/content/early/2012/07/18/1208296109.long

上田研究室ホームページ
http://www.bio.sci.osaka-u.ac.jp/dbs01/re-paper-temp.php?id=80




図:(A)細胞質分裂期のtalin Aとmyosin IIの共局在。(B)talin A欠損細胞の分裂失敗の様子。野生株(上段)ではGFP-myosin II(緑)が集積する分裂溝が細く括れるが、talin A欠損株では初期の段階で収縮環と細胞膜が乖離し(16分後)、分裂に失敗する。