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マボヤ生殖細胞系列での転写抑制を制御する因子を同定し、その機構を明らかにした。

A maternal factor unique to ascidians silences the germline via binding to P-TEFb and RNAP II regulation.

Kumano, G., Takatori, N., Negishi, T., Takada, T. and Nishida, H.
Curr. Biol. (2011) 21, 1308-1313.

要約
初期胚の生殖系列細胞では転写が抑制されており、体細胞系列との分離に重要な役割を果たしていることが知られる。多くの無脊椎動物では、卵に局在する母性因子が卵割に伴い生殖系列細胞にのみ受け継がれ、生殖系列細胞での転写抑制を制御する。DrosophilaとCaenorhabditisでは、それぞれにユニークな母性局在因子PgcとPIE-1が、pTEFb複合体に結合しRNA polymerase IIのリン酸化を抑制することで、グローバルな転写抑制を行う。今回我々はマボヤおいて、生殖系列細胞の転写をグローバルに抑制する母性局在因子PEMを同定した。PEMはpTEFb複合体との結合を介してRNA polymerase IIのリン酸化を抑えることで転写を抑制した。PEMはホヤにユニークな因子で、生殖系列細胞の転写抑制を制御する母性局在因子として、我々の知る限り、脊索動物では初、無脊椎動物ではPgc、PIE-1に次ぐ3番目の発見となる。今回の結果は、ハエ、線虫、ホヤを含めた幅広い種で、それぞれにユニークな母性局在因子を利用しつつも、pTEFbを介したRNA polymerase IIのリン酸化の抑制という共通の機構で生殖細胞系列での転写を制御する進化的拘束が働いていることを暗示する。

論文へのリンク
http://www.cell.com/current-biology/retrieve/pii/S0960982211007238

西田研究室ホームページ
http://www.bio.sci.osaka-u.ac.jp/bio_web/lab_page/nishida/index.html




図: PEM機能阻害胚の生殖系列細胞において、異所的な遺伝子発現(左上、in situ hybridizationの写真)とRNA polymerase IIのリン酸化(右上と下、抗H5抗体染色の写真)が観察された(共に黄矢頭)。また、PEM強制発現胚の体細胞において、遺伝子発現(左上)とRNA polymerase IIのリン酸化(右上と下)の消失が観察された(抗体染色に関しては青矢頭)。