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筋収縮のスイッチ:ナノメートルスケールの運動をパルス電子二重共鳴でついに捉えた

Switch Action of Troponin on Muscle Thin Filament as Revealed by Spin Labeling and Pulsed EPR

Aihara T., Nakamura M., Ueki S., Hara H., Miki M., Arata T.

J. Biol. Chem. (2010) 285, 10671-10677


要約
パルス電子二重共鳴法をもちいて、不対電子間距離2−6ナノメートルを高精度計測できる(1ナノメートル=10万分の1ミリメートル)。不対電子をもつニトロキシド(スピンラベル)を蛋白質の2つアミノ酸に結合させ、電子間距離を測ることで、蛋白質の伸展や屈曲を調べることができ、巨大なタンパク質複合体を溶液や組織のまま観測できる。論文でこの技術が応用されたトロポニンは、江橋節郎博士によって我が国で発見された、世界初の細胞内シグナル伝達に関与するタンパク質でありながら、カルシウムイオンを結合・解離することによって、筋収縮をスイッチオン・オフする分子構造論的基盤は長年不明であった。トロポニン-Iのスイッチセグメント領域とトロポニン-Cにスピンラベルを標識し電子間距離を測定した。巨大重合体アクチンフィラメント上のトロポニンへテロ3量体C-I-Tの中で、トロポニン-Iのスイッチセグメント領域がトロポニン-Cと相互作用することで、5ナノメートル以上も変位することが直接測定で明らかになった。カルシウム結合エネルギーを使ったこの変位は、筋収縮制御の一連のスイッチ反応の力点で起っていると考えられる。


論文へのリンク
http://www.jbc.org/content/285/14/10671.abstract

荒田Gホームページ
http://www.bio.sci.osaka-u.ac.jp/bio_web/lab_page/bioerg




パルス電子二重共鳴による、細いフィラメント上のトロポニン3量体における距離測定。近接電子による電子スピンエコー強度変調カーブ(左)と最適距離分布(右)。距離の単位はÅ(10分の1ナノメートル)(a) トロポニン-C の44番目とトロポニン-Iの133番目のアミノ酸に標識したスピンラベル同士間の距離分布。(b) トロポニン-C 61番目とトロポニン-I133番目の場合。 赤線:高カルシウムイオン濃度(+Ca2+) 青線:低カルシウムイオン濃度(-Ca2+)。




予想されるトロポニン3量体C(紫色)-I(水色)-T(濃黄色)の構造。 (a) トロポニン3量体単独、(b)細いフィラメント上に結合しているトロポニン3量体。左図:高カルシウムイオン濃度(+Ca2+)、右図:低カルシウムイオン濃度(-Ca2+)。スピン標識したアミノ酸は、充填モデルで示し、トロポニン-C の44番目(赤色)、61 番目(青色)、98番目(茶色)、Iの133番目(金色)。