エピジェネティクス研究室
Laboratory of Epigenetics

- 教授
- 田嶋 正二 (Shoji TAJIMA)
- 准教授
- 末武 勲 (Isao SUETAKE)
- 助教
- 木村 博信 (Hironobu KIMURA)
- 特任研究員
- 三島 優一 (Yuichi MISHIMA)

分子細胞生物学
蛋白質研究所
吹田地区

研究内容
真核生物には、塩基配列によらず、その記憶が次世代の細胞に伝えられる、エピジェネティクスと呼ばれる遺伝情報の発現制御機構があります。エピジェネティックな制御は、進化の過程で遺伝情報発現制御機構の一つとして利用されるようになり、高等真核生物ではなくてはならない制御機構となっています。その化学的な基盤は、DNAシトシン塩基5位のメチル化修飾と、ゲノムの収納に中心的な役割を担うヒストン蛋白質の翻訳後修飾です。高等真核生物では、特に遺伝情報抑制に働くエピジェネティクスが重要な意味をもちます。中でも、DNAのメチル化と、ヒストンH3の9番目と27番目、ヒストンH4の20番目のリシン残基のメチル化修飾は中心的な修飾です。私達は、DNAのメチル化模様が書き込まれ、維持される機構を中心として、抑制型のヒストンメチル化修飾がDNAメチル化修飾にどのように関わるのかを明らかにすることを目指しています。

DNAとヒストンのメチル化修飾とクロマチン構造
ゲノムの繰返し配列、レトロトランスポゾン、発現しない組織特異的な遺伝子配列中のCpG配列は高頻度でメチル化修飾(図1)、あるいは、ヒストンの特定のリシン残基が修飾を受けています。特定のゲノム領域がDNAメチル化酵素や修飾ヒストン認識蛋白質によってどのように認識され、メチル化修飾を受けるのかを考える上で、DNAやヒストン単独の状態でどのように修飾を受けるのかを解析するだけでは不十分です。私達は、生体内でゲノムが存在する状態であるヌクレオソーム(クロマチン)構造を再構成して、DNAメチル化酵素や修飾ヒストンに結合する蛋白質がどのようにヌクレオソームを認識しているのかを解析しています(図3)。
DNAメチル化酵素の構造と機能
DNAメチル化酵素として哺乳類にはDnmt1、Dnmt3aとDnmt3bの3つがあります(図2)。Dnmt3aとDnmt3bがDNAメチル化模様をゲノムに書き込み、一旦形成された模様を、DNA複製の過程でDnmt1が娘細胞に伝えています。Dnmt3LはDNAメチル化活性をもたないのですが、興味深いことに、生殖細胞でメチル化模様が書き込まれる上で必須な因子です。私達は、これらDNAメチル化酵素や関連する因子を組換え体として発現、精製して、DNAのメチル化活性の特性、機能領域構造の解析を行っています(図4)。また、構造情報から酵素に変異を導入し、その変異領域がゲノムのメチル化に果たす役割について、胚性幹(ES)細胞を用いて解析しています。生化学、構造生物学、分子生物学などの様々な解析手法により、メチル化模様の形成、維持、消去について明らかにすることを目指しています。
DNAメチル化酵素と相互作用する因子
哺乳類のDNAメチル化酵素はCpGより長い塩基配列を認識しているわけではありません。したがって、生体内で特定のゲノム配列をメチル化修飾するためには、DNAメチル化酵素は様々な因子と相互作用することで、活性やメチル化するべき領域の認識が規定されていると考えられます。例えば、Dnmt1はNp95/Uhrf1と呼ばれる因子と複製領域で相互作用して、メチル化模様の維持を担っていることを明らかにしています。私達は、DNAメチル化酵素が機能的に相互作用する因子を見つけ出し、それらの因子がどのようにDNAメチル化模様の調節、酵素の局在などに関わっているのかを明らかにしようとしています。
真核生物のゲノムDNA は、シトシン塩基の 5 位の炭素に DNA メチルトランスフェラーゼの働きでメチル化修飾を受ける
5種のDNAメチルトランスフェラーゼとその相同分子の構造模式図を示す
時期特異的に高発現するDnmt3bはヌクレオソームのコア領域もメチル化して、ゲノム全体のメチル化に大きく貢献するのに対して、Dnmt3aはクロマチン・リモデリング因子などの働きで、裸のDNAが露呈させられた領域を選択的にメチル化するというモデルを提唱する
複製過程でゲノムのメチル化模様を維持するDNAメチル化酵素Dnmt1は1620アミノ酸残基からなる大きな分子である。その結晶構造解いたところ、多くの領域からなるマルチドメイン構造をとっていた。この構造は、メチル化模様がどのように維持されているを理解する上で重要な糸口を与えてくれる。
参考文献
Otani, J. et al. Structural basis of the versatile DNA recognition ability of the methyl CpG binding domain of methyl-CpG binding domain protein 4 J. Biol. Chem. 288 , 6351 - 6362 (2013)
Mishima, Y. et al. Hinge and chromoshadow of HP1α participate in recognition of K9 methylated histone H3 in nucleosomes J. Mol. Biol. 425 , 54 - 70 (2013)
Takeshita et al., Structural insight into maintenance methylation by mouse DNA methyltransferase 1 (Dnmt1) Proc. Natl. Acad. Sci. 108 , 9055 - 9059 (2011)
Suetake et al., Characterization of DNA-binding activity in the N-terminal domain of the DNA methyltransferase Dnmt3a Biochem. J. 437 , 141 - 148 (2011)
Ross et al., Recombinant mammalian DNA methyltransferase activity on model transcriptional gene silencing short RNA-DNA heteroduplex substrates Biochem. J. 432 , 323 - 332 (2010)
Takeshima, H. et al. Mouse Dnmt3a preferentially methylates linker DNA, and is inhibited by histone H1. J. Mol. Biol. 22 , 1607 - 1616 (2008)
Sharif, J. et al. The SRA protein Np95 mediates epigenetic inheritance by recruiting Dnmt1 to methylated DNA. Nature 450 , 908 - 912 (2007)
Takeshima, H. et al. Distinct DNA methylation activity of DNA methyltransferases Dnmt3a and Dnmt3b towards the DNA in nucleosome. J. Biochem. 139 , 503 - 501 (2006)
Vilkaitis, G. et al. Processive methylation of hemimethylated CpG sites by mouse Dnmt1 DNA methyltransferase. J. Biol. Chem. 280 , 64 - 72 (2005)
Suetake et al., DNMT3L stimulates DNA methylation activity of Dnmt3a and Dnmt3b through a direct interaction J. Biol. Chem. 279 , 27816 - 27823 (2004)
連絡先
〒567-0871
大阪府吹田市山田丘 3-2
大阪大学大学院 蛋白質研究所
TEL:06-6879-8627 FAX:06-6879-8629
E-mail:tajima@protein.osaka-u.ac.jp